2024年11月19日 14:57
病気と言えば、糖尿病や高血圧、認知症、がん、感染症などが頭に思い浮かぶ方が多いだろう。これらの病気と睡眠不足に違いがあるか、と言われれば、大した違いはない。
病気の定義は実は意外に難しいのだが、一般的には「心身の正常な状態が損なわれて、不調が生じた状態」とされる。睡眠不足を考えてみれば、その人の必要とする睡眠時間が不足し、その結果、眠気や倦怠感、消化器症状、頭痛、パフォーマンスの低下などさまざまな問題が生じているのだから、病気として何ら矛盾はない。
「いやいや、一晩グッスリ眠れば体調が回復するのだから、がんや生活習慣病とは違うだろう」。このように反論する人もいるが、2つの点で誤っている。
第1点目は、眠れば症状が治るのだから病気でないというのならば、原因を解決すれば症状が消えるものは病気でなくなる。例えばアレルギー性鼻炎や熱中症も、花粉や熱暑を避ければ症状が治るのだから病気でないという理屈になる。
第2点目は、そもそも一晩眠ったくらいでは睡眠不足の悪影響は十分に回復していない。寝だめをすれば眠気が消えるので治った気でいるが、慢性的な睡眠不足状態に陥ると、ストレスホルモンや代謝機能は週末の寝だめだけでは回復しないのである(第62回「眠くない寝不足「潜在的睡眠不足」の怖さ」)。
実際、睡眠不足はその自己選択的な行動も含めて本当に病気として扱われている。国際的な睡眠・覚醒障害の診断基準でも「睡眠不足症候群(insufficient sleep syndrome)」という立派な病名がついている。寝不足自慢をする人には「寝食を忘れて何かに打ち込む」ことを美徳だと感じている人が多い。「病気」と言われて腹を立てる人もいる。私もその気持ちは分かるが、健康生活の持続可能性の観点からは異議がある。